便潜血反応の良い点は下剤を飲まないでよく、家で簡単にできるということです。しかも、便潜血反応を行うことで大腸癌の死亡率を15-30%ほど下げることができると報告されています。
これらの報告の多くはヘモカルト法などの化学的便潜血反応であり、現在の免疫学的便潜血反応ではもっと効果があるかもしれません。
イギリスの報告では便潜血反応を行った約76000人と行っていない約76000人を比較したところ便潜血反応を行ったグループで大腸癌でなくなった人は360人だったのに対し、便潜血反応を行わなかったグループでは420人が大腸癌でなくなったと報告されています。
つまり60人(15%)が便潜血により大腸癌死を免れたということです。これは統計学的にも有効であったと考えられています。
進行大腸がんであっても約1割の人では便潜血が陰性になることはすでにお話しました。また、早期大腸癌では約半数で便潜血陰性になってしまいます。
現行の保険制度では症状がないのに検査は受けられませんので、何も症状もなく便潜血検査も陰性であれば大腸内視鏡を受けるとなるとドックなどで自費で受けることになります。
幸いにも大腸癌は進行がんでみつかっても7割近くの人で根治することができますが、可能ならばもっと早期に発見したいものです。
歴史的には大腸内視鏡検査よりも注腸検査の方が古く、大腸内視鏡検査は1970年代から少しづつ普及してきました。
開発当初は直腸やせいぜいS状結腸までしか挿入できず、深部の大腸には挿入することができませんでした。
そのため、その当時は注腸検査でなければ深部の大腸癌が診断できない時期がありました。
最近では大腸内視鏡の機器と技術の進歩で95%以上の方で大腸の一番奥の盲腸まで検査をすることができるようになっています。
これらのことから多くの専門医が精密検査として大腸内視鏡検査のほうが注腸検査よりも優れていると考えているのです。
それにも関わらず注腸検査を第一に行っている病院があるのは何故でしょうか。
おそらく、注腸検査は放射線技師でも行うことができるからだと思われます。(大腸内視鏡検査は機器が良くなったとはいえ、ある程度の症例数をこなした消化器専門医でないと挿入するのは難しいといえます。)
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