便潜血検査は通常一度に2回分または3回分検査を行うことが多いでしょう。
このうち一度でも陽性(+)となった場合には大腸精密検査を受けること必要となります。
大腸癌や大腸ポリープがあっても毎日出血をするとは限らないからです。
その証拠に大腸癌の診断がついている人で便潜血検査を行ってみると2回、3回と陰性になる人がいます。
消化器の専門医であれば便潜血陽性にもかかわらず精密検査を行わずに便潜血検査を再検することはまずありませんが、消化器専門医でない医者の中には知識がなく再検査を行い便潜血陰性であれば精密検査を行わないでよいと思っている医者もいます。
おそらく尿潜血の場合に再検査をすることがあるのでこれに準じてそのようにしているのだと思いますが、非常に危険なことです。
便潜血検査は一度でも陽性であれば精密検査が必要です。
大腸精密検査は大腸内視鏡検査か注腸検査(バリウム)のどちらかが行われることが多いでしょう。
多くの消化器の専門医は大腸内視鏡の方が注腸検査よりも優れていると考えています。
注腸検査は影絵で見る検査ですので便が残っているとポリープのように映ってしまうこともありますし、腸が長い人では腸と腸が重なってしまってよく見えないときもあります。
大腸内視鏡検査は腸の中がテレビ画面に映し出されますので注腸検査よりも良く見えます。また、必要に応じて細胞を取る『生検』をしたり、ポリープを切除したりすることができますので、診断のみならず治療までできることがあります。大腸内視鏡検査で苦痛が強い方やどうしても奥まで挿入できない場合には注腸検査の方が苦痛が少なく有効なことがあります。また、手術が必要な大腸癌の際には注腸検査も行うことで大腸のどの部分に癌ができているかがはっきりし、手術の方針をたてるのに役立ちます。
歴史的には大腸内視鏡検査よりも注腸検査の方が古く、大腸内視鏡検査は1970年代から少しづつ普及してきました。
開発当初は直腸やせいぜいS状結腸までしか挿入できず、深部の大腸には挿入することができませんでした。
そのため、その当時は注腸検査でなければ深部の大腸癌が診断できない時期がありました。
最近では大腸内視鏡の機器と技術の進歩で95%以上の方で大腸の一番奥の盲腸まで検査をすることができるようになっています。
これらのことから多くの専門医が精密検査として大腸内視鏡検査のほうが注腸検査よりも優れていると考えているのです。
それにも関わらず注腸検査を第一に行っている病院があるのは何故でしょうか。
おそらく、注腸検査は放射線技師でも行うことができるからだと思われます。(大腸内視鏡検査は機器が良くなったとはいえ、ある程度の症例数をこなした消化器専門医でないと挿入するのは難しいといえます。)
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